〔M〜Z〕


 


  ▽ N ▽  

 NAMA orchestra ナマ・オーケストラ
1974〜1986年、カリフォルニアを拠点に活躍した演奏グループ。
バルカン・ダンス音楽を中心に、ユダヤ系音楽やアメリカ、ラテン音楽などの演奏で知られた。"NAMA Lesnoto Medley" を始め、"Jove Malaj Mome"、"Salty Dog Rag" など、日本のFD界でもよく知られている往年の名曲のスタンダード・バージョンを数多く演奏している。

  ▽ P ▽  

 partizan パルチザン
一般には、「労働者、農民などで組織された非正規軍」のこと。
ブルガリアなどの歌に登場する場合の多くは、特に「第二次世界大戦中のバルカン地方で、ファシズムの侵攻に抵抗したゲリラ組織」のこと。

 (the) Psalms 詩篇
旧約聖書の中の、神を賛美する詩などを集めた部分。
約150篇の詩のうち、約半数がダビデ王の作と伝えられている。
イスラエルのFD曲の歌詞には、詩篇の一部をそのまま使ったものも多い。

  ▽ R ▽  

 rabbi ラビ
ユダヤ教の指導者。ユダヤ教社会での教師、律法学者、裁判官、また礼拝や結婚、葬儀の主宰など、幅広い役割を果たす。

  ▽ S ▽  

 samovila (samodiva, vila) サモヴィラ
マケドニア、ブルガリアなどの伝説に登場する妖精。
足元まで流れ落ちるような、美しい金髪の持ち主と言われている。
音楽や踊りを好み、踊った跡にはミステリー・サークルの様な模様が残るとされている地方もあるらしい。元は森の女神で、守護している動物や植物を傷つけて彼女の怒りをかった者は、死ぬまで踊り続けさせられることもあるとか。
地方によっては、様々な動物に変身する能力があったり、足に蹄があったり、夜中に四つ辻で吸血鬼と踊るなど、「妖怪」的な描写も見うけられる。
Makedonsko Devojče の歌詞の中に登場。)

 saz サズ
トルコの伝統的な撥弦楽器で、トルコ民謡の伴奏には欠かせない。
洋ナシ型の胴体に長い棹を持ち、日本の三味線の親戚筋にあたる。
現在、サズの仲間は、トルコを中心にアルメニア・アゼルバイジャン、そしてギリシャ・アルバニア・ユーゴスラビアなどでも演奏されている。

 shabat (shabbat) シャバット
ユダヤ教の安息日。金曜の日没から土曜の日没まで。
  ∵ユダヤの1日は日没に始まり、週は日曜に始まるため、神が天地創造を
   終えて休息した第7の日は、金曜日没〜土曜日没に当たる。
正統派のユダヤ人は、聖書の記述に従っていかなる仕事も行わず、シナゴーグでの礼拝の他、家族や親戚、親しい友人との祈りの儀式と会食、聖書の勉強などで時を過ごすという。それぞれの場面で、伝統的な祈りの歌が、大きな役割を果たす。
男性たちがシナゴーグで安息日を迎える礼拝を終えて家に戻り、晩餐の用意が整うと、主婦は2本(以上)のろうそくに灯をともす。そして家族を先導して祈りを捧げ、安息日の始まりを告げる。(20世紀初頭の帝政ロシアの寒村に生きたユダヤ人を描いたミュージカル映画『屋根の上のバイオリン弾き』にも、そんな場面が・・・。)
安息日が終わる土曜の日没には、やはりシナゴーグでの礼拝を終えた後、(今度は家の主人が)2本の芯をおりこんだ特別のろうそく1本に灯をともし、聖なる安息日と別れて労働の1週間を迎える、けじめの儀式を行う。

 Shirat Hayam 海の歌
旧約聖書・出エジプト記に登場する歌。
葦の海(紅海)の奇跡」の直後、九死に一生を得たモーセとイスラエルの民が、神を賛美して歌った。
出エジプトは、いわば民族解放記念日、イスラエル建国の原点とされ、ユダヤ教最大の祭「過越しの日」には、この「海の歌」をシナゴーグや海岸で朗唱する風習があるらしい。
アニメ映画「プリンス・オブ・エジプト」では、モーセが民を引き連れ門を打ち開いてエジプトを出発する際にこの歌がヘブライ語で歌われ、特にユダヤの人々の感涙を誘ったという。
  ※ 大意:「主は我が力、我が歌、我が救い。主こそ我が神、たたえまつらん。
        その御手で敵を打ち砕き、御力をもて我らを導きたもう。」

 shofar 角笛
古代ユダヤの、雄羊の角でできたラッパ。
現在でもユダヤ教の儀式などで使われる。
聖書の中にも、敵を脅したり、戦争を布告したり、人々を招集したりする際に数多く登場する。(イスラエルの民がイェリコの街を攻撃したとき、神の言葉に従って角笛を鳴らし鬨の声を上げると、城壁が崩れ落ちてイスラエルを勝利へと導いた話など。)新約聖書の中で、最後の審判の日に吹き鳴らされるラッパもこの shofar。

 St. Lazar's Day 聖ラザルの日
「棕櫚の日曜日」の前日(土曜日)。
ブルガリアなどでは、この一年に初潮を迎えた少女たちが自作の衣装を着て村の家々を回り、大人になった(結婚できる準備ができた)ことをお披露目する。
    ※棕櫚の日曜日(Palm Sunday)
       「復活祭」の一週間前(日曜日)。

 synagogue シナゴーグ
ユダヤ教の会堂(礼拝所)。
礼拝の他、聖典の学習や、伝統的な歌と踊りの場にもなるようだ。シナゴーグの中央正面には「聖なる櫃」があり、トーラーの巻物が納められている。

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 tapan, davul タパン、ダウル(ダヴル)
バルカン・中近東一帯で広く使われている、両面の大太鼓。
木製の胴に、皮を張ったもの(最近はプラスチック+金属のものも)。片手に先が曲がった太めのバチ、もう一方の手には竹ひごの様な細いバチを持って、多彩な音を叩き出す。
特に、マケドニアやブルガリアのピリン地方などでは、ダンサーがタパンの上に乗ってパフォーマンスを見せたりもする。多くはズルナと組み合わせて、婚礼や祭りに欠かせない存在となっている。
タパンの起源とされるトルコのダウルも、「ダウル・ズルナ」と対に呼ばれることが多く、「どんなに豪華な婚礼も、ダヴルとズルナを欠いては不完全」ということわざまであるらしい。

 torah トーラー
律法書。旧約聖書の中のモーセ五書のことを指す。
(創世記、出エジプト記、レビ記、民数記、申命記)
ユダヤ教では、「聖書の中の聖書」として崇められている。安息日シナゴーグで行われる礼拝で、毎週決められた部分を朗読し、一年間で全て読み終える。

 Tsovinar ツォヴィナル
古代アルメニアの女神。別名 Nar。
水や海や雨の支配者で火の創造者でもあり、その怒りに触れると天から雨や雹が降るとされている。
アルメニアのアララット山(現トルコ領)は旧約聖書の中でノアの方舟が漂着した所、そしてアルメニア人はノアの子孫とも言われているが、そのアルメニアにも、ノアの洪水伝説の古い類型がある。曰く、
   宇宙と人間の創造神 Khardi が人間の不遜な振るまいに怒り、全てを滅ぼ
   そうとした。しかし、その妹である女神 Tsovinar が激しく反対した為、彼女
   にだけは知られない様に神々を召集し、大洪水を起こした。一人の男とそ
   の一族だけがお告げによって生き延び、人類の祖となった。

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 Vasilica ヴァスィリツァ
マケドニアの新年のお祭りの日。
マケドニアでは、現在の暦(グレゴリオ暦)の1月1日の他、旧暦(ユリウス暦)の新年に当たる1月13日にお祝いをする習慣があり、その日のことを東方正教の聖人 "聖 Vasilij" にちなんで、"Vasilica" と呼ぶ由。
この日にはマケドニア各地で様々なお祭りが開かれ、中でも Strumica (マケドニア南東部の町)のものが特に有名。人々は動物の皮などで作った仮面を被り、その仮面と火によって、悪霊などを追い払うと言われている。

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 zurna ズルナ
中近東〜バルカン地方を中心に広く使われている民族楽器。脳天に突き抜ける様な強烈な音色の笛(チャルメラのルーツ)。
クルドの人々は「zorna ゾルナ」、マケドニアでは「zurla ズルラ(複数形は zurli ズルリ)」と呼ぶ。